離職率の計算方法がわからない、あるいは自社の離職率が他社と比較して高いのか気になると悩む人事担当者は少なくありません。離職率は企業の健康状態を測る重要な指標であり、正しく算出することで組織の課題が明確になります。本記事では、基本的な計算式から厚生労働省の定義、業界別平均データ、そして離職率を改善するための具体的な施策まで徹底解説します。人材定着に向けた効果的な対策を検討しましょう。
離職率の基本的な計算方法と目的に応じた3つの算出パターン
離職率を算出する際、最も一般的に用いられる基本の計算式は「一定期間内の離職者数 ÷ 期間開始時点の在籍者数 × 100(%)」です。法律で厳密に定められているわけではありませんが、この数値を基準にすることで、組織全体や特定のグループにおける人材の定着状況を客観的に把握することが可能になります。例えば、ある年度の期初(4月1日)に100人の従業員がおり、その1年間で10人が退職した場合、離職率は10%となります。このシンプルな数値は、経営層への報告や年度ごとの比較において非常に強力な指標となります。
しかし、一言に離職率と言っても、その目的によって算出の対象は異なります。主に活用されるのは「全従業員の離職率」「新卒社員の離職率」「特定部門・属性別の離職率」の3パターンです。特に新卒社員の離職率は、企業の将来性を占う重要な指標として注目されます。例えば、4月に20人の新入社員を採用し、翌年3月までに4人が退職したとすれば、その年度の離職率は20%です。SNSや企業の口コミサイトでは「新卒がすぐに辞める会社は教育体制に問題があるのではないか」といった厳しい意見が見られることもあり、この数値を低く保つことは採用ブランディングの観点からも極めて重要です。
計算上の注意点として、算出期間と対象者の定義をあらかじめ明確にしておく必要があります。正社員のみを対象とするのか、契約社員やパート・アルバイトを含めるのかによって、結果は大きく変動します。一般的には「期間内に入社し、かつ期間内に離職した人」を分母に含めないケースが多いですが、より精緻な分析を行う場合には、平均従業員数を分母に用いる手法も存在します。こちらの詳細解説にあるように、自社の状況に合わせた適切な定義を行い、継続的に同じ条件で測定し続けることが、組織改善の第一歩となります。
厚生労働省が定義する「常用労働者」を基準とした正しい計算ルール
自社の離職率を日本の平均値と比較したい場合、厚生労働省の「雇用動向調査」で用いられている計算方法を理解しておく必要があります。公的なデータでは、以下の計算式が採用されています。「離職率(%)=(離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数)×100」。この方法の大きな特徴は、1月1日時点の人数を分母(固定)とし、12月31日までの1年間で退職・解雇された人数を分子として算出する点にあります。
ここで重要となるのが「常用労働者」の定義です。厚生労働省の基準では、期間を定めずに雇われている者、または1ヶ月以上の期間を定めて雇われている者などが対象となります。つまり、日雇い労働者や極めて短期間のアルバイトは含まれません。この公的なルールに則って算出することで、政府が発表する統計データと自社の数値を正しく照らし合わせることが可能になります。こちらの実務ポイントでも指摘されている通り、実務においては「なぜこの時期に離職が増えたのか」という季節変動や外的要因も考慮しながら、この公的基準を活用することが推奨されます。
また、厚生労働省の方式では「期間内入社・期間内退職」の扱いについても注意が必要です。1月1日以降に入社してその年のうちに辞めた人は、分母(1月1日時点の人数)には含まれませんが、分子(年間の離職者数)には含まれることになります。このため、急拡大している企業などでは計算上の離職率が実態よりも高く出てしまう可能性もあります。数字の表面だけを見るのではなく、その背景にある人員構成の変化を読み解く力が人事担当者には求められます。公的統計との比較は自社の立ち位置を知る「モノサシ」として活用し、社内の深い分析には独自に定義した詳細なデータを用いるという二段構えの運用が理想的です。
日本の平均離職率データと社会問題化する「753現象」の背景
自社の離職率を評価する上で、世間一般の相場を知ることは欠かせません。厚生労働省の調査によると、2023年における日本企業の平均離職率は15.4%となっています。性別で見ると男性が13.8%、女性が17.3%となっており、雇用形態別では一般労働者が12.1%に対し、パートタイム労働者は23.8%と大きな差が見られます。こうしたデータから、非正規雇用の流動性の高さや、女性のライフイベントに伴う離職の課題が浮き彫りになっています。
さらに、業界によっても離職率には顕著な差が存在します。宿泊業・飲食サービス業や生活関連サービス業・娯楽業などは、他業界に比べて離職率が高い傾向にあります。これは労働時間が不規則になりやすい点や、接客ストレス、キャリアアップの見通しの立てづらさなどが要因として挙げられます。一方で、電気・ガス・熱供給・水道業などのインフラ産業や製造業などは、比較的低い水準で推移しています。このように「業界の平均値」を知ることで、自社の数値が業界内では健全なのか、あるいは深刻な状況なのかを客観的に判断できるようになります。業界別の詳細データを確認し、自社が置かれている市場環境を理解しましょう。
また、日本では古くから「753(シチゴサン)現象」という言葉が知られています。これは、新卒入社から3年以内に中卒者の7割、高卒者の5割、大卒者の3割が離職してしまう現状を指したものです。特に大卒者の3年後離職率は長年30%前後で推移しており、2021年3月卒業者では34.9%という調査結果も出ています。SNSなどでは「3年我慢するのはもう古い」「もっと自分に合う場所を探すべき」という価値観が広がっており、若年層のキャリア観の変化が離職率に強く影響しています。企業側はこの変化を敏感に察知し、従来の「終身雇用」を前提としたマネジメントから、個人の成長を支援する「エンゲージメント重視」の体制へとシフトしていく必要があります。
離職率が高まる5つの主要原因と放置することで生じる経営リスク
なぜ離職率が高まってしまうのでしょうか。その背景には、単なる「給与への不満」だけではない複雑な要因が絡み合っています。多くの調査で上位に挙がるのは「職場の人間関係」「労働条件(残業・休日)への不満」「評価制度への不信感」「将来性の欠如」「採用時のミスマッチ」の5つです。特に人間関係は、SNSでも「上司との相性が最悪でメンタルが削られた」「同僚とのコミュニケーションが取れず孤立した」といった切実な声が溢れており、離職の決定打になることが多い要素です。
離職率が高い状態を放置することは、企業にとって極めて深刻なリスクを伴います。第一に挙げられるのが「コストの増大」です。一人の社員を新たに採用し、教育して戦力化するまでには、広告費や人事の工数、研修費など数百万円単位のコストがかかると言われています。早期離職が続けば、これらの投資はすべて無駄になり、利益を圧迫します。第二に「既存社員の負担増加」です。離職者が出ればその分の業務が残された社員に覆いかぶさり、さらなる不満を生んで「連鎖退職」を引き起こす危険性があります。こちらの改善方法で詳しく述べられているように、負のスパイラルに陥る前に手を打つことが重要です。
さらに、企業のブランドイメージや採用力の低下も見逃せません。現在はSNSや口コミサイトで、元従業員が社内の内情を赤裸々に公開できる時代です。「離職率が高いブラック企業」というレッテルを一度貼られてしまうと、優秀な人材の応募が激減し、採用コストがさらに跳ね上がるという悪循環に陥ります。離職率は単なる数字ではなく、企業の「存続可能性」を示すアラートであると捉えるべきです。経営層は現場で何が起きているのか、単なる数値目標の達成だけでなく、従業員一人ひとりの満足度を注視し、組織文化の根本的な見直しを行う勇気が求められます。
離職率を劇的に改善するための定着支援施策と効果的なアプローチ
高止まりした離職率を下げるためには、表面的な対策ではなく、従業員のエンゲージメントを根本から高める多角的なアプローチが必要です。まず着手すべきは「採用段階でのミスマッチ防止」です。自社の良い面だけでなく、あえて厳しい側面も伝える「RJP(現実的な仕事のプレビュー)」の手法を取り入れることで、入社後のギャップを最小限に抑えられます。入社後に「思っていたのと違う」と感じる新卒社員を減らすことが、全体の離職率低下に直結します。
次に、社内のコミュニケーション活性化と評価制度の透明化が不可欠です。近年、多くの企業で導入されている「1on1ミーティング」は、上司と部下の信頼関係を築き、離職の予兆を早期に察知する上で非常に効果的です。また、頑張りが正当に評価されないという不満を解消するために、評価基準を明確にし、フィードバックを丁寧に行う仕組みを整えましょう。具体的な改善ステップでも示されている通り、給与や福利厚生といった「衛生要因」を整えるだけでなく、仕事のやりがいや成長実感といった「動機付け要因」を刺激する施策が、長期的な定着には欠かせません。
さらに、働き方の柔軟性を高めることも現代の離職防止には有効です。リモートワークの導入やフレックスタイム制、時短勤務など、ライフステージの変化に合わせた選択肢を提示することで、特に女性や介護を担う世代の離職を防ぐことができます。福利厚生の充実も重要ですが、最近では「心理的安全性の確保」がより重要視されています。ミスを責めるのではなく、挑戦を称える文化を醸成することで、従業員は「この会社で長く働きたい」と感じるようになります。離職率の改善は一朝一夕には成し遂げられませんが、データを基に現状を分析し、現場の声を反映させた対策を一つずつ積み重ねていくことで、必ず組織は強く生まれ変わります。
離職率の計算と改善に向けたまとめ
- 離職率の基本は「離職者数÷期初在籍者数×100」で算出する。
- 厚生労働省の方式を用いると、公的統計との比較が容易になる。
- 日本の平均離職率は15%前後であり、業界による差が非常に大きい。
- 高い離職率は、コスト増・連鎖退職・企業イメージ低下の大きなリスクを招く。
- 改善には、採用のミスマッチ防止と1on1などによる信頼関係構築が鍵となる。


