AmazonとGoogleの親会社Alphabetが2026年7〜9月期決算を発表しました。両社ともクラウド事業は大きく伸びましたが、決算発表後の株価は時間外取引で下落しました。理由は「AI需要が弱い」からではありません。クラウド売上の急成長と同時に、データセンターなどへの巨額投資、フリーキャッシュフローの悪化、主力事業への期待とのずれが意識されたためです。
この記事の要点:AmazonはAWSが39.3%増、AlphabetはGoogle Cloudが103%増と、クラウド需要は強い結果でした。一方、Amazonは年間設備投資約2,200億ドルと直近12カ月のフリーキャッシュフロー424億ドル流出、Alphabetは株式評価損87億ドルと今後の設備投資増が警戒材料です。両社とも「成長の有無」より「成長に必要な現金と回収時期」が焦点になっています。
AmazonとGoogleの2026年7〜9月期決算を比較
| 項目 | Amazon | Alphabet(Google) |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,019億ドル、12%増 | 1,276億ドル、25%増 |
| 営業利益 | 281億ドル、前年174億ドル | 約406億ドル、30%増 |
| 営業利益率 | 13.9% | 31.8% |
| 純利益 | 207億ドル | 262億ドル |
| 1株利益 | 1.89ドル | 2.12ドル |
| クラウド売上 | AWS 460億ドル、39.3%増 | Google Cloud 307億ドル、103%増 |
売上規模はAmazonが大きい一方、全社の成長率と利益率はAlphabetが上回りました。ただし両社は事業構成が異なります。AmazonはEC、物流、広告、クラウドを持ち、Alphabetは検索広告、YouTube、クラウドが中心です。全社売上高だけで優劣を決めず、クラウドの成長と主力事業の伸びを分ける必要があります。
AmazonはAWSが39.3%増、過去約5年で最速
Amazonの売上高は前年同期比12%増の2,019億ドル、営業利益は281億ドルでした。営業利益率13.9%は会社発表によると過去最高です。AWSの売上高は39.3%増の460億ドル、営業利益は178億ドルで、前年の114億ドルから増加しました。
| Amazonの部門 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 |
|---|---|---|---|
| 北米 | 1,129億ドル | 6%増 | 87億ドル |
| 海外 | 431億ドル | 5%増 | 16億ドル |
| AWS | 460億ドル | 39.3%増 | 178億ドル |
AWSはAmazon全体の売上高の約23%ですが、セグメント営業利益の約63%を生みました。計算は178億ドル÷3部門営業利益合計281億ドルです。ECの売上規模より小さくても、AWSが利益の中心である構造が鮮明です。
AlphabetはGoogle Cloudが103%増
Alphabetの売上高は25%増の1,276億ドル、営業利益率は31.8%でした。Googleサービスの売上高は11%増の963億ドルで、検索・その他の広告売上は12%増。Google Cloudは103%増の307億ドルと倍増しました。会社は、企業向けAIインフラ、AIソリューション、基盤クラウドサービスに加え、TPUシステム販売が寄与したと説明しています。
| Alphabetの主要事業 | 売上高 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| Googleサービス | 963億ドル | 11%増 |
| Google検索・その他 | 633億ドル | 12%増 |
| YouTube広告 | 112億ドル | 9%増 |
| Google Cloud | 307億ドル | 103%増 |
クラウドの成長率が非常に高いのは、従来の利用料だけでなくTPUシステム販売も含まれるためです。AWSの39.3%とGoogle Cloudの103%は、ともに各社が開示した売上成長率ですが、売上の中身が完全に同じではありません。成長率だけを横並びにして「GoogleがAWSを抜いた」とは言えません。
好調なのに株価が下がった3つの理由
1.市場予想をわずかに下回った
AP通信によると、Amazonの売上高2,019億ドルは市場予想の約2,022億ドル、1株利益1.89ドルは予想約1.97ドルを下回りました。Alphabetも売上高1,276億ドルが予想約1,280億ドルに届かず、1株利益2.12ドルは予想約3.01ドルを下回りました。巨額企業では、増収増益でも事前期待に届かなければ株価が下がることがあります。
2.AmazonはAI投資でフリーキャッシュフローが流出
Amazonの直近12カ月の営業キャッシュフローは1,683億ドルへ29%増えましたが、フリーキャッシュフローは前年の148億ドル流入から424億ドル流出へ悪化しました。会社は、設備購入が前年比948億ドル増え、主にAI投資を反映したと説明しています。2026年の現金設備投資は約2,200億ドルを見込んでいます。
3.Alphabetは評価損と追加投資が警戒された
Alphabetの純利益は262億ドル、1株利益は2.12ドルでした。AP通信によると、株式投資の評価損87億ドルが1株利益を0.55ドル押し下げました。評価損は本業の広告やクラウドの失速とは別ですが、最終利益を大きく変動させます。また会社は、2027年の設備投資が大幅に増える見通しを示しており、AIインフラ投資の回収時期が注目されました。
独自比較:クラウド1ドルを得るための投資負担が焦点
| 確認軸 | Amazon | Alphabet |
|---|---|---|
| クラウドの強さ | AWS 460億ドル、39.3%増 | Cloud 307億ドル、103%増 |
| 全社売上に占める比率 | 約22.8% | 約24.1% |
| 利益・現金面の懸念 | FCF 424億ドル流出 | 株式評価損87億ドル |
| 投資の確認点 | 2026年設備投資約2,200億ドル | 2027年設備投資の大幅増 |
| 次の焦点 | 年末商戦とAWS利益 | 検索広告とCloud収益性 |
クラウド比率はAmazonが460÷2,019で約22.8%、Alphabetが307÷1,276で約24.1%です。売上構成上は近い水準ですが、AmazonはAWSの利益額を明確に開示し、AlphabetはGoogle Cloudの売上急増と全社利益を示しています。投資家が次に見るのは、AI設備投資が売上成長だけでなく、利益とフリーキャッシュフローへ転換する速度です。
Amazonの10〜12月期見通しは慎重か
Amazonは2026年10〜12月期の売上高を2,400億〜2,470億ドル、前年同期比12〜16%増と予想しています。営業利益は285億〜335億ドルを見込みます。市場予想はレンジ中央付近ですが、年末商戦を含む重要四半期のため、投資家は小売需要と利益率を慎重に見ています。
なお、2026年は主要国のPrime Dayが第2四半期へ移り、前年は第3四半期に含まれていました。Amazonは、この日程差を除けば第3四半期の成長率は約4ポイント高かったと説明しています。前年同期比を読む際にはイベント時期のずれも考慮が必要です。
売上成長率だけでは見えない利益と現金の違い
決算を見る際は、売上高、営業利益、純利益、フリーキャッシュフローを区別する必要があります。営業利益は本業の収益力を示しますが、純利益には保有株式の評価損益など営業外の項目が入ります。フリーキャッシュフローは、営業活動で得た現金から設備投資などを差し引いた後に残る現金です。
| 指標 | 何が分かるか | 今回の注意点 |
|---|---|---|
| 売上高 | 事業規模と需要 | 事業構成が違うため単純比較しない |
| 営業利益 | 本業で稼ぐ力 | クラウドと小売・広告の構成差が大きい |
| 純利益 | 税・営業外損益を含む最終利益 | Alphabetは株式評価損、Amazonは前年のAnthropic投資益の反動 |
| フリーCF | 投資後に残る現金 | AmazonはAI設備投資で大幅流出 |
Amazonの純利益が前年の212億ドルから207億ドルへ減った一因は、前年同期にAnthropicへの投資で95億ドルの税引前利益が計上されていたためです。営業利益は増えており、純利益の減少だけで本業が悪化したとは判断できません。Alphabetも87億ドルの株式評価損が1株利益を0.55ドル押し下げており、検索広告やクラウドの営業動向とは分けて見る必要があります。
AI投資はいつ回収できればよいのか
データセンター投資は、支出した四半期に売上がすべて発生するものではありません。土地、建物、電力設備、ネットワーク、AI半導体を先に確保し、その後にクラウド顧客の利用量が増えることで回収します。短期的にはフリーキャッシュフローを押し下げますが、能力不足で受注を逃すことも成長企業にはリスクです。
確認すべきなのは「投資額が多いか少ないか」だけではなく、クラウド売上の増加、受注残、設備稼働率、営業利益が投資に追いついているかです。AmazonではAWSの売上・利益とフリーキャッシュフロー、AlphabetではCloudの売上・利益と設備投資額を複数四半期で追う必要があります。単月の株価反応より、投資1年後、2年後に現金創出力が改善するかが本質です。
今後確認すべきポイント
- Amazon:AWSの39%前後の成長が続くか、設備投資増でもフリーキャッシュフローが改善へ向かうか。
- Amazon:年末商戦期の売上高が会社予想レンジに収まり、北米・海外事業の利益率が維持されるか。
- Alphabet:Google Cloudの急成長がTPU販売だけでなく、継続課金型のクラウド利用へ広がるか。
- Alphabet:検索広告の伸びがAI検索普及の中で維持されるか、2027年設備投資の具体額と回収計画。
よくある質問
Amazonの2026年7〜9月期売上高はいくらですか?
2,019億ドルで、前年同期比12%増です。AWSは460億ドルで39.3%増でした。
Google Cloudは本当に103%増えたのですか?
Alphabetの公式発表ではGoogle Cloud売上高が307億ドル、前年同期比103%増です。企業向けAI需要に加え、TPUシステム販売も寄与しています。
両社とも好決算なのに、なぜ株価は下落したのですか?
市場予想を一部下回ったこと、巨額AI投資による現金負担、Amazonの年末商戦見通し、Alphabetの評価損と今後の設備投資増が意識されたためです。
AWSとGoogle Cloudは成長率だけで比較できますか?
できません。開示範囲や売上構成が異なり、Google CloudにはTPUシステム販売も大きく寄与しています。売上額、利益、継続課金、設備投資を合わせて見る必要があります。
AmazonとGoogleの株は買いですか?
この記事は売買を推奨するものではありません。短期の株価より、クラウド成長が利益とフリーキャッシュフローへ転換するかを次回決算で確認することが重要です。
まとめ
AmazonとAlphabetの決算は、AI需要の強さと投資負担を同時に示しました。AWSは39.3%増、Google Cloudは103%増とクラウドは好調です。一方、Amazonはフリーキャッシュフロー流出と2,200億ドル規模の設備投資、Alphabetは評価損と2027年の追加投資が焦点です。次回決算では、クラウド売上の伸びだけでなく、利益率、現金創出力、主力のEC・検索広告が投資を支えられるかを確認する必要があります。
あわせて読みたい
主な参照情報
- Amazon 2026年第3四半期決算
- Amazon Form 8-K
- Alphabet 2026年第3四半期決算
- Alphabet Form 10-Q
- AP通信 Amazon決算報道
- AP通信 Alphabet決算報道
本記事は2026年10月30日時点の公開情報に基づく一般的な企業・業界解説であり、特定銘柄の売買や将来の株価を推奨・保証するものではありません。

