結論:国民年金の第3号被保険者は、厚生年金に加入する会社員・公務員などに扶養される、20歳以上60歳未満の配偶者です。本人が国民年金保険料を直接納めなくても、第3号の期間は老齢基礎年金の保険料納付済期間として扱われます。
ただし、「年収130万円未満なら必ず第3号」という理解は正しくありません。2026年10月に短時間労働者の月額8.8万円(年収約106万円)という賃金要件が撤廃され、勤務先の規模や週の所定労働時間によっては、年収130万円未満でも自分の勤務先の社会保険に加入して第2号被保険者になります。
この記事では、2026年11月2日時点の公式情報に基づき、第3号被保険者の条件、年収130万円の考え方、将来の年金額、扶養を外れるケース、必要な手続き、制度廃止の議論を整理します。
第3号被保険者とは?第1号・第2号との違い
厚生労働省の公的年金制度の説明では、第3号被保険者を、厚生年金の被保険者である第2号被保険者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者としています。妻だけでなく夫も対象で、事実婚の配偶者を含む場合があります。
| 区分 | 主な対象 | 保険料 | 将来の年金 |
|---|---|---|---|
| 第1号 | 自営業、学生、無職など | 本人が国民年金保険料を納付 | 老齢基礎年金 |
| 第2号 | 厚生年金に加入する会社員・公務員 | 給与・賞与から控除、会社も負担 | 老齢基礎年金+老齢厚生年金 |
| 第3号 | 第2号に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者 | 本人による直接納付なし | 第3号期間は老齢基礎年金に反映 |
第3号の保険料は「未納」や「免除」ではありません。日本年金機構も、本人が国民年金保険料を納める必要はないと案内しています。一方、第3号の期間だけでは厚生年金の報酬比例部分は増えません。自分の勤務先で厚生年金へ加入した期間は、第2号として基礎年金に加えて厚生年金が上乗せされます。
第3号被保険者になる主な条件
基本条件は、次のすべてを満たすことです。
- 20歳以上60歳未満である
- 配偶者が厚生年金に加入する第2号被保険者である
- 配偶者に生計を維持されている
- 原則として年間収入が130万円未満である
- 同居なら原則として配偶者の年間収入の2分の1未満である
- 自分の勤務先で健康保険・厚生年金の加入対象になっていない
別居の場合は、本人の年間収入が配偶者からの仕送り額より少ないことが原則です。障害厚生年金を受けられる程度の障害がある人は、年間収入180万円未満が基準になる場合があります。個別の認定は配偶者の加入する健康保険や日本年金機構が行うため、年収だけで自己判断しないことが重要です。
2026年4月から年収130万円の確認方法が変わった
日本年金機構の2026年4月からの取り扱いでは、労働条件通知書や雇用契約書に記載された賃金から見込まれる年間収入が130万円未満で、給与以外の収入が見込まれない場合、契約内容を基に被扶養者として認定できる仕組みが示されました。
| 確認項目 | 2026年4月以降のポイント |
|---|---|
| 年収見込み | 労働条件通知書・雇用契約書の賃金から計算 |
| 含めるもの | 基本給だけでなく、諸手当・賞与も含む |
| 他の収入 | 給与以外の収入が見込まれないことが条件 |
| 必要書類 | 契約内容が分かる書類と「給与収入のみ」の申立て |
| 使えない例 | 契約期間が1年未満、シフトや手当額が不明確など |
この変更は130万円基準そのものを引き上げるものではありません。「前年の実績がたまたま130万円を超えたか」だけでなく、認定時点の労働契約から今後1年間の収入を確認しやすくする取り扱いです。契約変更や恒常的な賃上げがあれば、再確認が必要になります。
106万円の壁撤廃と130万円の壁は別制度
2026年10月、短時間労働者が勤務先の健康保険・厚生年金に加入する際の「月額8.8万円以上」という賃金要件が撤廃されました。厚生労働省の適用拡大Q&Aでは、2026年10月以降は年収約106万円を加入判定で気にする必要はないと説明しています。
| 基準 | 何を判定するか | 2026年11月時点 |
|---|---|---|
| 旧106万円の壁 | 自分の勤務先の社会保険に入る賃金要件 | 月額8.8万円要件は撤廃済み |
| 週20時間 | 短時間労働者の社会保険加入条件 | 引き続き重要 |
| 企業規模 | 短時間労働者の適用対象 | 現在は原則51人以上、段階的に縮小予定 |
| 130万円の壁 | 配偶者の健康保険の扶養・第3号の収入条件 | 原則130万円未満の基準が残る |
現在、51人以上の企業などで週20時間以上、2カ月を超える雇用見込みがあり、学生ではない短時間労働者は、賃金額にかかわらず勤務先の社会保険に入る可能性があります。その場合は年収130万円未満でも第3号ではなく第2号です。詳しい勤務条件は106万円の壁撤廃後の社会保険加入条件で整理しています。
なお、国民年金の第3号・健康保険の被扶養者、所得税の配偶者控除、勤務先の家族手当は別制度です。第3号から外れても税の配偶者控除が直ちにゼロになるとは限らず、反対に社会保険の扶養内でも会社独自の家族手当が終了する場合があります。収入を増やす前に、社会保険、税金、会社手当の3項目を別々に確認すると、手取りの見込み違いを防げます。
第3号の期間は年金額にどう反映される?
第3号被保険者期間は、老齢基礎年金の保険料納付済期間に含まれます。2026年度の老齢基礎年金の満額は、昭和31年4月2日以後生まれの場合、月額70,608円、年額847,300円です。
| 例 | 第3号期間の扱い | 注意点 |
|---|---|---|
| 20~60歳の480月がすべて納付済み・第2号・第3号 | 満額の計算対象 | 生年月日で満額が異なる場合あり |
| 第3号が120月ある | 120月すべて納付済月数に含む | この期間に厚生年金の上乗せはない |
| 切替後に第1号保険料を未納 | 未納月は年金額へ反映されない | 受給資格や障害・遺族年金にも影響し得る |
日本年金機構の老齢年金パンフレットは、第2号と第3号の期間も保険料納付済月数に含むと明記しています。自分の記録は「ねんきんネット」で確認し、第3号のはずの期間に空白や第1号未納がないかを見ておくと安全です。
第3号被保険者から外れる6つのケース
| 外れるケース | 切替先の目安 | 主な手続き先 |
|---|---|---|
| 自分の勤務先で社会保険に加入 | 第2号 | 自分の勤務先 |
| 年収130万円以上が見込まれる | 第1号または第2号 | 勤務先・市区町村など |
| 配偶者が退職 | 第1号、または新たな扶養先 | 市区町村・新しい勤務先 |
| 配偶者が65歳に到達 | 原則として第1号 | 市区町村 |
| 離婚・配偶者の死亡 | 第1号または第2号 | 市区町村・勤務先 |
| 本人が60歳に到達 | 国民年金の強制加入終了 | 記録や任意加入の要否を確認 |
見落としやすいのが、配偶者の65歳到達です。日本年金機構は、配偶者が引き続き厚生年金に加入していても、扶養される側は第3号から第1号への切替が必要になると案内しています。
切替が遅れると、本来第1号である期間が未納として訂正され、将来の年金額だけでなく障害基礎年金や遺族基礎年金の要件に影響する可能性があります。資格が変わったら、配偶者の会社や市区町村へ速やかに確認してください。
第3号被保険者になる・外れるときの手続き
- 第3号になる:配偶者の勤務先へ「被扶養者(異動)届」と第3号被保険者関係届を提出します。通常は健康保険の扶養手続きと一緒に行います。
- 自分が就職して第2号になる:自分の勤務先が健康保険・厚生年金の資格取得手続きを行います。
- 第1号へ切り替える:配偶者の退職・65歳到達、離婚、収入増などの場合は、資格喪失を確認し、市区町村の国民年金窓口で手続きします。
手続きには、基礎年金番号が分かるもの、本人確認書類、扶養から外れた日が分かる証明、退職日や資格喪失日を確認できる書類などが必要になる場合があります。具体的な必要書類は自治体や健康保険で異なるため、事前に確認しましょう。
第3号被保険者制度は廃止される?
2026年11月2日時点で、第3号被保険者制度の廃止は決定しておらず、廃止日もありません。厚生労働省は2026年9月4日に国民年金第3号被保険者制度等に関する検討会を開始し、制度の現状と実態調査を議論しています。
議論の背景には、共働き世帯の増加、短時間労働者への社会保険適用拡大、就業調整、公平性などがあります。ただし、検討会の開催は即時廃止を意味しません。公式に確定しているのは、2026年度中に実態調査の結果を取りまとめ、課題を整理する方針です。SNSや見出しだけで「来年廃止」と断定せず、法案成立・施行日・経過措置の公表を待つ必要があります。
よくある質問
第3号被保険者は年金保険料を払わなくてよいですか?
本人が国民年金保険料を直接納める必要はありません。第3号期間は保険料納付済期間として老齢基礎年金に反映されます。
年収130万円未満なら必ず第3号ですか?
いいえ。自分の勤務先の社会保険加入条件を満たせば、130万円未満でも第2号になります。配偶者の収入や生計維持関係も確認されます。
106万円の壁はなくなりましたか?
2026年10月に月額8.8万円の賃金要件は撤廃されました。ただし週20時間、企業規模、雇用見込み、学生要件は残り、130万円の被扶養者基準も別に残っています。
第3号だけで厚生年金も増えますか?
第3号期間は基礎年金には反映されますが、厚生年金の報酬比例部分は増えません。自分が第2号として加入した期間は厚生年金が上乗せされます。
第3号被保険者は2027年に廃止されますか?
廃止は決まっていません。2026年に検討会が始まった段階で、実態調査と課題整理が進められています。確定情報は厚生労働省の法改正案・成立・施行日で確認してください。
まとめ
第3号被保険者は、厚生年金加入者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者で、本人の直接負担なしに第3号期間が老齢基礎年金へ反映される制度です。2026年度の基礎年金満額は月70,608円ですが、実額は20歳から60歳までの加入記録で決まります。
2026年10月に106万円の賃金要件が撤廃された一方、130万円の扶養基準は別に残っています。まず勤務先の週所定労働時間と企業規模を確認し、次に年間収入と生計維持関係を確認する順番が重要です。配偶者の退職・65歳到達、本人の収入増や就職があれば、切替漏れを防ぐため勤務先や市区町村へ早めに相談しましょう。
年金額や制度変更の確認時期は2026年の税金・給付金・年金カレンダーも参考にしてください。
主な参照情報
- 厚生労働省:公的年金制度の体系
- 日本年金機構:国民年金保険料
- 日本年金機構:労働契約内容による年間収入の認定
- 厚生労働省:社会保険適用拡大Q&A
- 日本年金機構:2026年度の年金額
- 日本年金機構:老齢年金ガイド
- 日本年金機構:配偶者が65歳になったとき
- 厚生労働省:第3号被保険者制度等に関する検討会
本記事は2026年11月2日時点の公表情報に基づく一般的な解説です。被扶養者認定や必要書類は加入する健康保険・勤務先・個別事情で異なります。

