定年廃止を検討している企業にとって、2026年度の「65歳超雇用推進助成金」は確認しておきたい制度です。厚生労働省は、65歳以上への定年引上げ、定年の定めの廃止、66歳以上の継続雇用制度の導入などを行う事業主に対して助成する制度として案内しています。
この記事では、定年廃止でもらえる助成金の金額、主な条件、申請期限、注意点を整理します。結論から言うと、定年の定めを廃止した場合の支給額は、対象被保険者数が10人以上なら240万円です。ただし、就業規則の整備・届出、申請期限、予算状況などを満たす必要があり、「定年をなくせば必ずもらえる」制度ではありません。
定年廃止で使えるのは65歳超継続雇用促進コース
65歳超雇用推進助成金には複数のコースがあります。そのうち、定年廃止や定年引上げに関係する中心的なコースが「65歳超継続雇用促進コース」です。高年齢者が意欲と能力のある限り働けるようにするため、企業が制度として雇用継続の仕組みを整えた場合に支給されます。
対象となる主な措置は、65歳以上への定年引上げ、定年の定めの廃止、66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入です。中でも「定年廃止」は、企業の人事制度を大きく変える取り組みなので、支給額も大きく設定されています。
最低賃金や人件費対策とあわせて制度を見たい場合は、最低賃金引き上げ対策で使える補助金・助成金も参考になります。賃上げ、人材確保、シニア雇用は別々の話に見えて、実際には人手不足対策としてつながっています。
定年廃止の支給額は最大240万円
JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)の案内では、定年の定めを廃止した場合の支給額は、対象被保険者数によって次のように分かれています。
- 対象被保険者数1~3人:60万円
- 対象被保険者数4~6人:120万円
- 対象被保険者数7~9人:180万円
- 対象被保険者数10人以上:240万円
つまり、検索でよく見かける「定年廃止で最大240万円」は、対象被保険者数が10人以上の場合の金額です。1~3人の小規模事業所では60万円なので、自社の人数区分を先に確認する必要があります。
また、定年引上げや継続雇用制度の導入でも支給額は設定されていますが、措置内容と年齢、対象人数で金額が変わります。70歳以上への定年引上げや66歳以上の継続雇用制度など、どの制度改定が自社に合うかを比べて考えることが大切です。
主な条件は就業規則の整備と高年齢者雇用管理措置
この助成金で重要なのは、制度を「口約束」ではなく就業規則や労働協約に反映し、必要に応じて労働基準監督署へ届け出ることです。JEEDの案内では、就業規則等により対象となる制度を実施していることが主な要件として示されています。
さらに、高年齢者雇用推進者の選任や、高年齢者雇用管理に関する措置を1つ以上実施していることも要件に含まれます。たとえば、教育訓練、作業施設や方法の改善、健康管理・安全衛生への配慮、職域拡大、処遇の見直し、勤務時間制度の弾力化などです。
ここを軽く見ると、制度変更だけ先に進めたのに申請でつまずく可能性があります。定年廃止は従業員にとって大きな安心材料になる一方、会社側には評価、賃金、健康配慮、配置転換の設計が求められます。
申請期限は制度実施月の翌月から4か月以内
申請期限も重要です。JEEDは、定年引上げ等の措置の実施日が属する月の翌月から起算して4か月以内の各月月初から15日までに、必要書類を添えて申請するよう案内しています。郵送の場合も、消印ではなく申請期間内に各支部へ到着している必要があります。
また、予算額上限や申請受付件数の状況によって、受付が停止される場合があるとされています。助成金は年度途中で要件や受付状況が変わることがあるため、「あとでまとめて申請すればよい」と考えるより、制度改定前から申請窓口や社労士に確認しておく方が安全です。
定年廃止が向く会社と注意が必要な会社
定年廃止が向きやすいのは、熟練社員の技能や顧客対応力が収益に直結している会社です。製造業、建設業、運送、介護、専門サービス、小売の現場責任者など、経験の蓄積が強みになる職場では、シニア人材の継続就業が人手不足対策になります。
一方で、定年廃止は「何歳になっても同じ働き方を求める制度」ではありません。体力負担の大きい職場では、勤務時間、職務内容、安全衛生、賃金体系を見直さないと、本人にも会社にも負担が出ます。制度を変える前に、どの仕事を何歳まで任せるのか、短時間勤務や職務変更をどう設計するのかを整理しましょう。
働く側の社会保険や手取りの変化を確認したい場合は、扶養130万円の壁と社会保険の確認ポイントもあわせて読むと、雇用条件変更の影響を考えやすくなります。
Q&A:定年廃止と65歳超雇用推進助成金
定年廃止なら必ず240万円もらえますか?
必ずではありません。240万円は、定年の定めを廃止し、対象被保険者数が10人以上の場合の支給額です。人数区分、就業規則の整備、申請期限、その他の要件を満たす必要があります。
定年を65歳に引き上げるだけでも対象ですか?
対象になり得ます。65歳以上への定年引上げも対象措置の一つです。ただし、支給額は定年廃止とは異なり、引き上げる年齢や対象被保険者数によって変わります。
申請はどこに出しますか?
申請先は、事業主の主たる雇用保険適用事業所がある都道府県のJEED支部です。東京と大阪では高齢・障害者窓口サービス課が案内されています。最新の受付状況と必要書類は公式ページで確認してください。
社労士に頼んだ方がよいですか?
就業規則改定、労基署への届出、支給申請書類の整理が必要になるため、不安がある場合は社労士への相談が現実的です。特に定年廃止は賃金制度や評価制度にも影響するため、助成金だけで判断しない方が安全です。
申請前に確認したいチェックリスト
- 定年廃止、定年引上げ、継続雇用制度のどれを実施するか
- 対象被保険者数が何人区分に入るか
- 就業規則や労働協約に制度変更を反映できているか
- 労働基準監督署への届出が必要な場合に済んでいるか
- 高年齢者雇用推進者の選任や雇用管理措置を実施しているか
- 制度実施月の翌月から4か月以内という申請期限に間に合うか
- JEED支部の受付状況、予算状況、最新様式を確認したか
定年廃止の助成金は、うまく使えばシニア人材の定着と人手不足対策に役立ちます。ただし、助成金を受けることだけを目的に制度を変えると、賃金設計や安全配慮で後から困ることがあります。まずは自社の年齢構成、業務内容、健康配慮、評価制度を整理し、公式要件に合う形で進めることが大切です。
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本記事は2026年8月28日時点で確認できる公式情報をもとにした一般的な解説です。実際の受給可否は個別事情や最新要領で変わるため、申請前にJEED、厚生労働省、社会保険労務士などへ確認してください。

